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2011.05.28
キミ[21歳/学生]-春に濡れて-Vol.5
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ふと目をやった窓は依然として雨が打ちつけられている。
シトシトシト…
カーテンから覗く、月明かりの無い暗い夜は、僕が目の当たりにしているこの光景のように、暗く、そして濡れていた。
…
キ「あっ…んっ!!!」
剥きだしのクリトリスを僕に吸いつかれたキミは、キミはビクッとのけ反るように体を震わせると、大きな喘ぎ声を上げた。それでも一向に意に介さぬように、僕は尚も舌をキミにクリトリスに這わせ続ける。
そして、這わせていた舌先を仕舞いこむと、今度は、小さな米粒を吸い込むようにそっと力をいれないようにして、吸い付いた。
キ「んっんんんっ!!!」
キミはまたしても大きくのけ反ろうとした。しかし、僕はキミがのけ反り暴れても、僕の舌から逃れられないように、がっしりと足を抱きかかえるようにして、キミの股の間に顔を埋めたまま、キミに尋ねた。
僕「…ん?痛い?」
痛いわけがないくらい、触れるようにそっと愛撫をしてる僕は、意地悪な顔をしていただろう。
そうとも知らずにキミは答える。
キ「んーん…痛くない…アッ…んっんっんんっ…」
キミが言い終えるのを待たずに僕は舌を這わせ、舌先でトントントン…とキミに剥きだしのクリトリスをノックした。
グッショリと濡れたキミに秘部からは、トロトロの愛液が溢れだし、僕はそれに混ぜ合わせるように無遠慮に唾液を垂れ流しながらキミのおま○こを愛撫する。
僕の唾液とキミの体液は混じりながら、水位を増し、深度を増させる。
僕は息を止めて潜水を行なうように、キミの中に深く潜りこむ。深く舌を入れ、鼻先でクリを愛撫しながら、顔面をキミの股間で濡らしていく。
僕の舌も、僕の指も僕の鼻も僕自身が男性器になったようにキミの秘部に触れ、味わい、堪能する。
しばらくして、埋めていた顔を離し、僕は体を起こして、両手をキミの下半身へと忍ばせる。
左手の親指の腹ででクリトリスをなでながら、僕は右手の2本の指をキミのおま○この中に入れて愛撫する。
キミは背中をそって、押し寄せる快楽と、漏れてしまう声を封じ込めるために、体をくねらせ、顔を両手で覆っている。
そして、暗闇の中で、愛くるしいくらいに可憐な喘ぎ姿を僕に、僕だけに晒している。
キミの膣内はもう洪水のようだった。
僕がそこを刺激しているとパンパンのゴム毬のように、膨れ上がり、押すと水をふんだんに含んだスポンジを絞るように中から水分があふれ出してくる。
ギュッポ…ギュッポッ…ギュッポっ…
キ「ンアッ!!!う゛う゛んんっグッんんっ…$%&’(!”#$%&!」
言葉にならない言葉を放ちながら、キミの体が大きく身震いをするように震え、そして静止する。
一瞬の間を置いて、深く息を吸い、そしてまたビクッビクッっと震えて、呼吸が戻ってくる。
肩で息をしながら、脱力をして横向きに寝そべるキミ。
滴る雫に濡れた手をキミの股間から離し、そして、キミの背に張り付くように添い寝をする僕。
僕はそっとキミの首の下に左腕を通し、キミを包み込むように方法をする。
キミの右手が僕の右手に触れようとモゾモゾと動き出す。
僕はそっとキミの手を取り、指を絡める。安心をしたようにキミは右手は脱力しベッドに転がる。
僕は髪を掻き分けてキミのうなじを捜し、そして、うなじにキスをする。
うなじから、耳へと舌は続く。
耳の穴に舌滑り込ませると、キミはまた、ビクッと体を震わせる。
うなじに舌を差しこんで、ビチャビチャとわざと大きく音を立てる。
直接脳内に響かされる淫猥な濡れた音は、キミを更に狂わせる。
キ「あーあーあっあっあっ…アッアアアアアッ!!!アッんっんっんっ」
ちょっと間が抜けたような声を出すキミの足を押し広げて、クリトリスを親指と人差し指と中指でこねくりまわすと、キミはまた狂ったように金切り声を上げ出した。
キ「あぁぁぁっん!!!んっんっんっ!!!」
クリクリ…クリクリクリ…
中指の腹で円を描くようにクリをこねくり回す。
ピチョピチョピチョ…と音がする。
キ「あっあっ…キモチイイ…あっあっ」
耳もクリトリスへもビチョビチョになっている。キミは涎を垂らさんばかりに口を半開きにして、擦れた声を出している。
キミを背中から抱きしめるように腕枕をしていた体勢から、僕は腕を抜き、キミをこちら側に向くように体を寝返り打たせた。
キミと見つめあういそして、キミの口を吸う。
キミも夢中で舌を差し出し、そして舌を絡める。
目を開けると、夢中になって僕とキスをする動物的な様子のキミがいた。
荒れた息遣い、滴る唾液、額に浮かぶ汗。
すべてがいやらしくぬめり、そして濡れている。
キミも僕に気づき、目を開ける。
目じりがとろっとさがり、瞳に灯る、情欲の色が、やけに官能的に見えた。
僕は、自分の頭をベッドのの下側に持って行き―つまり、キミの下腹部へ―そして、そのままキミのおま○こに顔を埋めた。
側位のような形のシックスナイン。
キミの太ももの肉感を両方の頬に感じながら、淫猥な液体でビチョビチョになっているキミの性器に再び舌を這わす。
ねっちょりとした粘度ある液体が舌にまとわりつく。
すると、不意に自身の下腹部に、違和感を感じて、目をやるとキミが、僕のペニスを頬張っていた。
頬いっぱいに性器をふくみながら、一方で大きく股を広げて、僕の愛撫を受けるキミ。
クリを舌で弾くと
キ「…んっ!んっ…」
といって口の動きを止める。
そしてすぐにまた再開をする。
キミの下の口からあふれ出す、液体がビチョビチョになりながら、キミの肛門に垂れていく。
構わずに僕は肛門に指を入れようとすると、
ビクッと体を震わせ、口から僕のペニスを離し、
キ「だ、だめ…そこは…」
と哀願をする。
ちょっとだけ残念に思いながら、キミの願いを聞き入れると、僕はまたキミのおま○この中に舌を埋めていく。
ピチョピチョピチョ…
キ「んっんっんっ…」
ピチョピチョピチョ…
キ「あっんっあっはぁっんっ…」
ピチョピチョピチョ…
キ「あっやっあんっはるちゃんっ…んっ」
掬っても掬っても、溢れてくる愛液。
キミも丁寧に僕の肉棒を咥えたり、舌先で愛撫をしたりしながら、濃厚なフェラチオを繰り返す。
やがて、そのままキミは僕の上に跨るような格好になり、僕は下からキミの股に舌を伸ばす。
顔中が唾液や愛液でビチョビチョになりながらも、僕は、尚も愛撫を続けていると、キミは口をペニスから離しこちらを振り返ると、
キ「は、はるちゃん…もう欲しい…」
と言った。
僕「何が欲しいの?笑」
とあえて、意地悪をすると、キミは素直に、
キ「これ…」
といいながら、僕のペニスをむぎゅっと掴む。
僕「だから、どれ?ちゃんと言わないと分からないよ?」
キ「…だから、おちんちん…はるちゃんの…」
僕「もうパクッてしちゃってるじゃん?笑」
っていいながら、僕はまたクリトリスを舐め上げる。
キ「あっふぁっ・・・」
僕「どこに欲しいのかいってごらん?」
キ「いまハルちゃんが舐めてるとこだよー!はるちゃん意地悪しないで」
僕「あはは(笑)」
といいながら僕は起き上がり、体勢を変える。
キミを僕の上に跨っている格好から、ベッドに寝そべるようにさせて、僕はキミの股の間に体を入れる。
枕元のテーブルに置いてある財布からコンドームを取り出し、装着すると、キミの足を押し広げながら、キミの体を少し起こして、ベッドの背もたれにもたれ掛けさせる。
キミは背もたれにもたれかかるように座りながら、股を大きく広げさせられている。
僕はキミにまじまじと見せ付けるように、いきり立ったペニスをキミの股の根に押し付ける。
僕「欲しいの…これ?」
キ「…うん…」
キミは照れながら、頷く。
僕「どこに欲しいの?」
キ「そこ…」
僕「どこ?」
キ「おま○こ…」
僕「誰の?」
キ「…キミのおまんっ…ぁっんっ!!」
キミが言い終わるのを待たずに、少しだけ挿入する。
ビチョビチョのキミのおま○こは、ニュルッと僕のそれを吸い込んだ。
キ「んっ…あっ…」
亀頭が埋まるくらいの深さで挿入すると、しばらくそのままにする。
僕「痛かった?」
キ「んーん…ビックリしただけ。気持ちいい…んっんっ」
またキミが言い終えるのを待たずに、挿入をする。
今度は、ゆっくりと引き抜き、また亀頭が隠れるくらいに浅めに挿入をする。
チュポッ…グニュ…
浅めの挿入を何度か繰り返していると、刺激に馴れてきたのか
キ「もっと、もっとちょうだい…」
僕は、例の如く、
僕「何を?笑」
とにやけた顔をしながら、しらばっくれて聞くと
キ「おちんちん…もっと深く………あっんっ!!!」
言い終わる前に、一気に奥まで挿入する。
キ「…んっ……んっ…」
息を吸い込みながら、止めるように声を上げるキミ。
子宮口まで到達して、それ以上奥へは進めないところまでペニスを押し込み、そして、そのまま静止をする。
そして、ゆっくりと抜いていく。
キ「…んっ…はぁぁぁぁぁぁんっ」
すると、深く息を吐き出すようにする。
またゆっくりと肉棒をキミの蜜壷の中に深く埋めていくと震えた声をだしんながら、僕の腕にしがみつきながら、目を閉じて声を漏らす。
これ以上進まないところまで埋めて、再び静止をする。
そして、トントントンと出し入れをせずに、押すようにして、腰をゆっくりと動かす。
キ「あ あ あ …」
とリズミカルに…吐息を漏らすキミ。
キミを抱きかかえ、僕の上に跨らせる。
対面座位のような格好で、キミの腰を支えながら、ゆっくりと腰を動かさせる。
僕「自分で動いてごらん?」
と僕がいうと、キミは、恥じらいながらも、ぎこちない腰つきで、動き始めた。
クリトリスを擦り付けるように、前後にグリ…グリ…と動き始める。
キミの腰の動きをサポートするようにそっと両手を支え、それに合せて僕自身も腰を動かす。
すると…
キ「あ゛ぁぁぁぅ…あ゛あ゛あ゛…」
声の質が変わりはじめ、喘ぎ声は嬌声へと変化してきた。
キ「あ゛…ん゛…」
キ「…」
キ「あ゛あ゛ん゛!!!やっ!!だ、だめ!!」
僕「ん?なにがダメなの?やめる?」
意地悪に聞き返しながら、僕はキミの腰をしっかりと掴み、ソコをピンポイントで刺激し続ける。
キ「あ゛…ん゛、ぢがう…あ゛っ!!!だ、だめ、やめない、あ゛っ…」
僕「んー?何?何いってるの?」
ジュプっジュプッ…
キミのおま○こから、卑猥な音が漏れ出してくる。
キ「あ゛ーーーだ、だめ、なんか…あ゛っ変な感じあっ…あっ…」
僕「だから、何がダメなの?ここがダメなの?笑」
っていいながら、僕はリズムを変えずに、ソコをトントントンと付き続ける。
キ「あっあっあっあ゛っあ゛っあ゛っ…はるちゃんっっtぅ!!!!!ん゛んっ…」
キミは大きく息を吸った。
キ「…」
息を止めたまま、腰を動かし続け、そして一瞬の間を置いて、硬直すると僕の首に両手を回し、僕の背中の皮膚に爪をつきたてた。
キ「………んぁっ!!!んっ!んっ!!ぐっ!!!」
と、声をもらし、ビクッとと震え、力が入った。
キ「……んっぐっん゛っ…」
更に何度か小刻みに震えた後に…不意に弛緩するキミ。
小刻みに震えながら、僕にしがみつき、キミの中に入っている僕のペニスを締め付ける。
キ「あ゛っ…ん゛…っん゛…っん゛っ…」
ビクンッ…ビクンッ…と体を震わし、しなだれるように僕にしがみつき、僕の肩に顔のままもたれかかる。
僕はキミの華奢な上半身を向かえるように抱きながら、キミの耳とうなじ中途半端は場所にキスをした。
…しばらく何もせずにそうしていると、キミの呼吸が整い始める。
僕はキミの髪に手を絡めて、頭をポンポンとなでながら、頬にもキスをした。
キミは、肩でしていた息が整い始め、キミも僕のうなじにキスをしてくる。
毛繕いをするように僕らは、互いに、所構わず接吻し、そして、愛撫する。
耳、頬、唇、頬、耳、瞼、額、前髪の産毛、鎖骨、乳首、乳房、首筋、そしてまた耳へと、いたるところをキスをしながらと愛撫をしていた。
僕がキミの耳にキスをした時、キミが沈黙を破るように
キ「あははっくすぐったいっ!!!笑」
と言った。
僕「じゃあ、もっとしてやるっ」
と僕が言うと、
キ「はるちゃん、ホンマにエッチの時は意地悪やなぁ…笑」
ちょっとだけ冗談で悲しいような顔をするキミ。
僕「…あれ?感じてたんじゃないの?」
とにやけながら聞き返すと、
キ「…うん。気持ちよすぎた(笑)ひとりだけ逝ってしまって恥ずかしいわ」
とまた悪戯っぽく笑った。
そんなキミにキスをすると、僕は体勢を変える。
跨ったまま繋がっている状態のキミから、僕はペニスを引き抜き、キミをベッドに寝そべらせる。
そして、キミに左側を向かせてると、僕はキミを後ろから腕枕をするようにして、抱きしめる。
キミの頭の下を通した僕に左手は、キミの左手を握り締め、右手でキミの足を持ち上げて、そのまま挿入しようとキミのおま○こを確認すると、
未だにグチョグチョに濡れていた。
僕「…めっちゃ濡れてますやん(笑)」
と後ろから耳元で囁くと
キ「はるちゃんのせいやで?」
そういうキミへの愛おしさを募らせながら、僕は再び後ろからキミへ挿入をする。
キ「んっ…あっ…や…ばっ…きもちいい…」
僕はゆっくりとちょっとずつ挿入し、奥まで入れると、僕の右手でキミの右手を探し当て、そして、キミの右手を握り締めた。
両手を繋ぎ、腕枕をして、僕はゆっくりと、キミと繋がり始める。
キミはすごく濡れていた。
僕らが繋がっている正にその場所は、まるで泉のように湧き出してくる。
泉から湧き出てくる愛液は、キミのお尻をヒタヒタにぬらし、股を伝いベッドにシミを作った。
僕「キミ、どこが気持ちいいの?」
キ「そのちょっと奥らへんとか…んっあっんっ」
僕「ここはどう?」
キ「おしっこしたくなってしまう(笑)」
僕「そういえばさーキミって○○○に似てるよね?」
キ「…へ?○○○?」
僕「いやいや!!すっげー字が似てるけども!!違うからっ(笑)」
キ「ハルちゃんは誰に似てるって言われる?」
僕「…○○とか?ご本人には、申し訳ないけど(笑)」
キ「あっ似てる似てる!!!笑」
僕「じゃあ、お互い、売れっ子同士ってことで(笑)」
キ「これが本人同士やったら、一大スキャンダルやね(笑)」
僕「○○と○○、お泊り愛!!!みたいな?笑」
キ「あはは!そうそう(笑)」
…僕とキミは繋がりながら、色んな話をして、色々なものを共有した。
性感帯、匂い、声、温もり、記憶、価値観。
そして、僕の絶頂の瞬間は、キミを四つんばいにさせて後ろから突きながら迎えることになった。
僕「…キミ、バックでしていい?」
キ「…うん。ハルちゃんの好きにしていいよ?」
そうして、挿入したままの状態で、体勢を変えると、キミを四つんばいにさせる。
頭を突っ伏させ、背中をそらせて、お尻を突き出せる。
肛門の穴まで丸見えにさせながら、僕はキミのお尻を鷲づかみにしながら、肉棒をキミのおま○こに突き立てる。
キ「ん゛ー!!!ん゛っーーー!!!」
僕「痛くない?大丈夫?」
キ「大…丈夫っ!あ゛っあっハルちゃん!!もっと、もっと…」
僕「んんっんっんっ」
キ「あっあぁあ゛あ゛んっ…もっと…いっぱい、突いて…」
僕「はあっ…はぁっ…」
キ「あああぁぁっぁぁぁ…」
僕「ねぇ、キミ…逝っていい?笑」
キ「…あ、ぁ゛んっ…うん、いっぱいきてっ…あっ…」
僕は一突きをして、ぐっと肉棒を押し付けると、キミのお尻を両手で鷲づかみにしながら、体を震わせる。
ドクンッドクンッドクンッ…
それまで長時間にわたり抑制していた射精が一気に解放されたこともあり、
ドクンッドクンッ…ドクンッ…と更に身震いは続く。
僕の震えに合せてキミも震える。
キミを、獣のように、四つんばいにさせ、さらに尻を突きださせ、
その両方の臀部の肉を鷲づかみにしながら、
その秘部とも言える場所に、肉棒を突き立てながら僕は、
僕の射精に合せて、同じに身震いしながら、
背中を反らせ、顔を突っ伏し、肛門をヒクつかせながらも、
押し寄せる快感に対抗すべく、
ギュッとシーツを掴むキミの手をぼんやりと見ていた。
そして、刹那的に、最初にキミと手を繋いだ時の、ガサガサと荒れてしまっていたキミの手を思い出し、更に連想する。
きっとその手は、子どもを抱きかかえ、料理を作り、食器を洗い、洗濯をして、衣服をたたんでいる手。
頑張っている手。
女でありながらも、女だけではいられない手。
その手が僕は急に愛おしくなり、背後からキミの手に触れる。
僕「キミ…手…」
というと、キミも無言で手の平を上に向ける。
繋がったまま、背後から覆いかぶさりながら、右手を繋ぐ。
やっぱりガサついた手だった。
それゆえの愛しさを感じながら、僕はキミの右手にキスをする。
キミは怪訝そうな顔をして、僕を見た。
そして、そのまま、君にキス。
…
…
ホテルのエントランスを出ると、一条の光が僕らを照らした。
雨は止み、すっかりと晴れ渡り、心地よい春の陽気が僕らを出迎えてくれた。
僕らは雨上がりの道を手を繋ぎながら歩く。
僕らの別れの時間は近づいていた。
キミは、今日の夕方には戻らないとならなかったし、僕も、仕事に向かわなければならなかった。
お互いに分かってること。
でもそれは、お互いに分かりたくないこと。
それでも、どちらからともなく、無言で駅に向かって歩き出す。
駅の前まで来た時、横断歩道の信号が赤になったので、立ち止まり、信号待ちをする。
キミは、俯きながら、僕に腕を絡めてそして手を絡めてくる。
悪戯っぽく笑っているのかと思ってキミを見たら、意表を疲れて、物憂げで、ちょっとだけ、寂しそうな表情をしていた。
キミの気持ちが痛いほどによく分かった。僕が感じている、切なさや、寂しさと同種のものだと安易に想像がつくからだ。
…
ちょっとだけ、考えて、携帯を取り出し、取引先に連絡をする。
「すいません。○○です。ちょっと渋滞に巻き込まれてしまって、30分くらい遅れます。申し訳ありません。」
「あぁいいですよ。大丈夫です。お待ちしてます」
そう気さくに仰っていただけたのは、幸運だった。
電話を終えて、キミを見る。
とっても不思議そうな顔で、それでも、喜色を浮かべながら、僕を見る君。
ん?なーに?って顔をしながら、満面の笑みで、
「ということなので、お嬢さん、もし良かったら…軽くご飯でもどうですか?」
とキミを軽薄そうに誘ってみた。
…ひゅうっ
4月の暖かくて、爽やかな春風が僕らの間を通り抜けていく。
そして、信号が変わると、静止していた人波が一気に動き出す。
僕らはその人波で乗るように、踵を返して、歩き出す。
皐月の空は、昨日の雨が嘘みたいに青く澄み渡り、
春の柔らかな日差しは、しっとりと濡れてしまった僕らをゆっくりゆっくりと、暖めてくれた。
おしまい
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